「音楽教室の生徒を引き抜かれてしまった。」
そのとき感じる気持ちは、簡単に言葉にできるものではありません。
長く通ってくれていた生徒や保護者が、ある日突然、別の音楽教室に移ってしまう。
しかも、その裏で誰かの働きかけがあったと知ったときのショックは、とても大きいものです。
「私の教え方が悪かったのかな?」
「どうしてこんなことに…」
そんな気持ちが頭をよぎり、落ち込んでしまうこともあると思います。
この記事では、なぜ生徒の引き抜きが起こるのか、法律的にはどうなのか、そして
少しずつでも前に進めるように、参考になれば嬉しいです。
生徒が引き抜きにあった!なぜこんなことが起きるの?
生徒が辞めてしまい、しかもその裏に誰かの働きかけがあったと知ったとき、心が大きく揺れるのは自然なことです。
一生懸命教えてきた生徒さんとの関係が、まるで一瞬で崩れてしまったように感じるかもしれません。
しかし、こうした「引き抜き」のような出来事は、音楽教室の世界では少なからず起こり得ることです。
なぜ、そんなことが起きてしまうのか。
その背景を知っておくと、
独立した先生が引き抜いてしまった
音楽教室の講師が独立し、自分の教室を開くことは珍しくありません。
それ自体は悪いことではなく、むしろ音楽を続けたい思いからの自然な流れとも言えます。
しかし、その過程でこれまでの生徒に声をかけてしまうケースがあります。
「今度は自分の音楽教室で教えるから一緒に来ない?」というように。
結果的に、残された教室側からすると「引き抜きに遭った」と感じてしまうことになるのです。
独立する側には「信頼関係がある生徒と一緒に音楽を続けたい」という思いもあるかもしれません。
ただ、こちらの教室にとっては大きなダメージとなりますし、業界内での信頼を失うリスクもあります。
こうしたケースは、対面でのレッスンが一般的な
保護者同士のつながりが影響してしまった
音楽教室では、保護者同士の繋がりができやすいものです。
発表会や待合スペースで顔を合わせるうちに、自然と会話が生まれ、LINEグループなどで交流が続くこともあります。
この関係性が強くなると、ある保護者が別の音楽教室に移った際に、
「こっちの教室の方が近いし、先生も変わったばかりで丁寧だよ」
そんな何気ない一言が、引き抜きのきっかけになってしまうケースです。
多くの場合、これは悪意というより人間関係の延長線上で起きる自然な動きです。
しかし、教室にとっては複数の生徒が一度に抜けるきっかけになることもあり、精神的なダメージが大きくなりやすい特徴があります。
競合の音楽教室から声をかけられてしまった
地域内に複数の音楽教室がある場合、
特に大手の教室や新規で生徒を増やしたい教室では、宣伝や口コミだけでなく、個別に生徒や保護者へ接触するケースもあるのです。
「もっと発表会に力を入れている教室があるよ」
「月謝が安くなるからどう?」
そんな言葉に惹かれ、気持ちが揺らいでしまうこともあります。
この場合、勧誘する側は「情報提供」のつもりであっても、受け取る側や元の教室にとっては引き抜きに感じられる行為です。
競合関係がある以上、完全に防ぐことは難しいですが、
これって違法?気になる法律のこと
「生徒の引き抜きって違法じゃないの?」
時間をかけて築いてきた関係を、誰かに壊されたように感じたとき、法的にどうにかならないかと考えるのは当然です。
生徒の移動や教室の選択は基本的に自由であり、全てが違法になる訳ではありません。
一方で、
ここでは、引き抜きが違法とされるケースや、訴える際に注意したいポイントを整理していきます。
引き抜きが違法になるのはどんなとき?
生徒が別の音楽教室に移ることは、生徒や保護者の自由です。
そのため、ただ音楽教室を変えられただけでは違法になりません。
でも、
- 元講師が在職中に生徒を誘った
- まだ退職していない講師が「自分の音楽教室に移りませんか?」と声をかけていたら、競業避止義務の違反と判断されることがある。
- 音楽教室の顧客名簿を使って引き抜いた
- 保護者の連絡先リストなどを無断で利用していたら、営業秘密の不正使用として問題になる。
- 雇用契約で禁止されている行為を実施した
- 「退職後○年間は生徒を勧誘しない」といった契約があるのに破られていたら、契約違反で損害賠償を請求できる可能性がある。
- しつこい勧誘や誹謗中傷を伴った
- 他の音楽教室を悪く言ったり、何度も連絡して困らせたりして引き抜いたなら、不法行為として裁判で争える場合もある。
- 在職中については、労働条件ではないが、企業の正当な利益が侵害されることを防ぐため、労働契約の付随義務として、労働者は使用者と競合する業務を行わない義務を負っていると解されている。
- 退職後については、企業の正当な利益があるとしても、労働者に職業選択の自由があるため、競業避止義務は限定的に解されている。
- 競業避止義務を課すことが有効であるかは、個々の事案毎に最終的に司法において判断されるものである。
全てが違法な訳ではありませんが、場合によっては泣き寝入りする必要はありません。
「ただ移っただけ」と「引き抜かれた」には大きな違いがあることを知っておきましょう。
退職後の制限や引き抜きの損額賠償
元講師が退職後に独立し、新しい音楽教室を開くこと自体は自由です。
しかし、条件によっては「好き勝手に生徒を誘っていい」という訳ではありません。
音楽教室との契約に「退職後○年間は近くで同じ業種を開業しない」や「生徒を勧誘しない」といった条項があれば、退職後でも制限がかかる場合があります。
生徒を引き抜かれたことによって、
つまり…
- 契約書や誓約書で禁止しているのに破られた場合
- 明らかに故意に生徒を連れていった場合
こうしたケースでは、法的に対抗できる可能性があるということです。
証拠集めと冷静さが大切
生徒の引き抜きに法的な対応を求めるなら、相手が生徒を意図的に誘った証拠が必要です。
- 生徒や保護者が「誘われた」と分かる記録
- メールやSNSでの誘いのメッセージ
- 顧客名簿を持ち出したことを示す証拠
証拠が不十分なまま進めると「ただ別の教室に移っただけ」と判断されてしまい、訴えても思ったような結果に繋がらないことがあります。
また、相手や保護者に感情的にぶつかってしまうと、
生徒や保護者との関係を守りたいなら「一呼吸おいてからどう対応するか考える」ことが重要です。
場合によっては、弁護士など専門家に相談し、冷静に手順を踏むことが安全な選択になります。
大切な生徒を守るためにできること
生徒が引き抜かれたら、それは引き抜かれやすい状況だったのかも知れません。
そんな辛い思いを二度と起こさないためにも、
ここでは、すぐにでも取り入れられる具体的な対策を紹介します。
契約や規約を見直してトラブルを防ぐ
大切な生徒を守るため、
特に、退職後の勧誘行為に関する条項を盛り込み、それから「生徒を意図的に誘わない」という合意を明確化しておくと抑止力になります。
法律的な強制力には限界がありますが、契約に書面で残すだけでも「やってはいけないこと」という意識を強く持たせられるので効果的です。
また、生徒の連絡先リストや個人情報の管理ルールを徹底しておくことも重要です。
こうした情報が外に出なければ、引き抜きのきっかけを減らすことができます。
ルールを見直すだけで、あなたの教室はぐっと強くなります。
辛い経験をバネに、次の一歩を踏み出す準備していきましょう!
生徒や保護者との信頼関係を深める
生徒の引き抜きで辛いのは、実行した講師はもちろん、辞めてしまった生徒や保護者に思いが伝わっていなかったことにありますよね…
だからこそ、
信頼を築くには、特別なことを実施する必要はありません。
- レッスンのひとつずつ真剣に向き合う
- 保護者の小さな声にも耳を傾ける
- 発表会やイベントで「ここに通っていて良かった」と感じてもらえる瞬間を増やす
生徒や保護者かの信頼は、一朝一夕で見に付きません。
こうした日々の積み重ねが、
あなたを選んでくれている生徒と保護者の信頼は、最大の財産です。
揺らいだ気持ちを取り戻すのは簡単ではありませんが、これから築く関係はもっと強く深いものにできます!
同業者との距離感や付き合い方を意識する
同じ地域で音楽教室を運営していると、他の先生と繋がりができることもあります。
情報交換やイベントでの協力など、良い関係を築ければ心強い仲間にもなります。
しかし、距離感を誤るとトラブルのもとになることも。
特に、生徒の引き抜きみたいな問題が起きた相手に対しては、必要以上に接点を増やさない方が無難です。
大切なのは、信頼できる相手と健全な関係を築くこと。
業界全体で協力できる場は活用しつつも、
無理に仲良くする必要はありません。
あなたの音楽教室と生徒を守ることが、何よりも優先です。
引き抜きのショックから立ち直るために…
音楽教室の生徒を引き抜かれるのは、本当に心が揺さぶられる出来事です。
怒りや悲しみが一気に押し寄せてきて「もう教室なんてやめようかな…」と考えてしまうかも知れません。
でも、あなたの教室にはまだ大切な生徒がいて、これから出会う未来の生徒も待っています。
今の感じているショックは、
ここで立ち止まるのではなく、一歩だけでいいので前に進むことを考えてみませんか?
そのためにできることを、次でお話しします。
これから出会う生徒に目を向ける
今の生徒、それから卒業していった生徒の顔を思い浮かべてみてください。
そして、これから出会うかも知れない未来の生徒のことも。
引き抜きに遭ったとき、どうしても「失った生徒」に気持ちが引っ張られがちです。
でも、その先に出会う新しい生徒や、今も通ってくれている生徒の存在こそ、あなたの教室の未来を作っていきます。
例えば、新しい生徒が体験レッスンに来てくれたときに「この子とどんな音楽を一緒に楽しめるだろう?」と考えるだけで少し気持ちが前向きになりませんか?
これまでの信頼と経験を持つあなたなら、きっとまた笑顔で生徒と向き合える日が来ます。
失ったものではなく、
その一歩が、心を整える第一歩になります。
一人で抱え込まず信頼できる人に相談する
引き抜きに遭ったショックは、想像以上に心を消耗させます。
「誰にも話せない…」
「自分だけが悪いのでは?」
そう感じてしまい、余計に辛くなることもあります。
でも、一人で抱え込む必要はありません。
同じように音楽教室を運営している仲間、信頼できる友人、家族。
もし身近に相談できる相手がいなければ、同業者のコミュニティや弁護士などの専門家に相談するのも一つの方法です。
あなたの悩みを理解してくれる人は必ず居ます。
「一人で抱えない」ことは、弱さではなく強さです。
生徒を守って未来に目を向けるために
生徒を引き抜かれるという出来事は、教室を運営するうえで大きなショックです。
怒りや悲しみ、そして不安…
いろいろな感情が押し寄せてくるのは自然なことです。
しかし、今回お伝えしたように…
- 引き抜きが違法になるケースがあることを知る
- 防止するための仕組みを整える
- 心を整えて冷静に未来に目を向ける
この3つを意識するだけで、同じ経験を繰り返さない力を持てるようになります!
大切なのは、あなたの教室を信頼して通ってくれている生徒や、これから出会う未来の生徒です。
その人たちのために、今できることから少しずつ進めてみてください。
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